- ルールが簡単なボードゲームが良い
- シンプルなデザインのゲームが好き
- 少し考える要素が欲しい
- ボードゲームで遊び始めたけどカードゲームではない、もうちょっと『らしい』ゲームで遊びたい
このような需要を持つ方に向けたページになる。
アブストラクトゲームとは?
僕はアブストラクトゲームが好きだ。知的なイメージがあって、すっきりしたコンポーネントも美しい。なにより純粋な思考の比べ合いがたまらない。(残念ながらあまり強くはない)
用語について改めて整理する。
アブストラクト(抽象的、理論的な)
- 具体的なテーマが無い
- 運要素、非公開情報が0
- 初期状態が全員同じ
厳密に定義されているわけではないが、上記の特徴を持つゲームはアブストラクトと称されることが多い。
今回はあまり言葉の定義にはこだわらず、プレイ中の運要素が0なゲームを条件に挙げていく。
先に断っておくと『囲碁』『将棋』はレジェンド過ぎるため紹介しない。
初心者の方には中々手に取ってもらえないことも多いアブストラクトゲームだが、僕は初心者にこそおススメしたい。その理由については記事中でも触れていく。
では
【迷宮制作】コリドール【暫定№1アブストラクト】
自分の持っているボードゲーム全体の中でも屈指のプレイ回数を誇るゲーム。
自ターンにできることは、『駒を1マス動かす』か『壁を一枚建てる』の二つだけ。
向いの陣地まで駒を到達させた人の勝ち。ただし、駒を壁で完全に囲うのはだめ(ゴールまで辿り着ける道は残さなければならない)
- ルール説明が一分で終わる。
- 準備が簡単
- 考えどころ満載
- 見た目がちょっとおしゃれ。
- 1vs1はガチ、4人戦はワイワイ。
と、初心者オススメ要素しかない。
以下に少しネタバレというか攻略のヒントを書くので気にする方は画面スクロール推奨。
僕がこのゲームを初心者にこそ楽しんでもらいたいのは、誰しもがダイナミックな思考の変化に気づくことができるからだ。
ゲーム慣れしていない人の多くが、ゲーム開始直後はこう考える。(20人以上にインスト・同卓しているが殆ど↓だ)
- (壁を作って相手を邪魔するのが重要だ)
- (自分には邪魔でなく、相手には妨害になるような置き方・駒の進め方をしなければ)
と。ところが、中盤から誰かが気づき始める。
・(相手の壁を利用して、逆に自分の逃げ道を塞いでしまえばいい)
こうなってくるとゲームの様相が様変わりする。序盤は相手をシャットアウトするために使った壁を、今度は自分のために使うようになる。最後の壁をどう使うか。チキンレース的な要素もゲームに追加される。ウィニングロードが開けた時はとても楽しい。
初回の方にはぜひ続けて2ゲームプレイしてほしい。1回目と2回目で、盤上に向ける目線が変わっていることに気づくはずだ。
【そこはオレの土地だぜ!】テラノバ【多人数囲碁?】
今回紹介する3作の中では一番知名度が低いと思われるゲーム。テラノバ。
へクスで構成されたマップを区切って自分の陣地を確保するゲーム、と大まかに説明できる。細かいルール説明は省略する。
境界線を打って自分の陣地を作っていく感じは囲碁と少し似ている。
魅力として
- 誰のものでもない「境界線」コマ
- 戦略と戦術のバランス、アドリブの楽しさ
2つあると思っている。
1 境界線を作るのが難しく、面白い。自分の領土はできるだけ広く取りたいが、広すぎると相手駒も侵入してきてしまう。さらに、自分がせっせと建てた境界線を利用して領土を完成させるプレイヤーが出たり、狭い土地に閉じ込められてしまったり、「境界線」は誰のものでもないからこそ得点手段にも妨害手段にもなり得るのだ。レーベンヘルツというゲームにも似たシステムが内蔵されているので気になったら是非。
2 戦略=大局的な駒の運用、大まかな方針。戦術=局地的な動き方。だと何かの漫画で読んだ。テラノバではまさにこの2つの違いをわかりやすく体験できる。盤面を俯瞰で見て戦略に沿って1アクション、相手の動きに対応する戦術をもって1~2アクション、みたいな。コマ数も多いため、『同時並列処理』をしているかのような気分になれる。
相手の動きに対応しようとすると、俯瞰で見ているだけでは気づかないようなことに気づけたりもする。逆もしかりだ。そのような思考の瞬発力が試されるのもテラノバの魅力だ。
局地的な争いで相手を制しつつ、大局的にも成功を収められたらとても楽しい。気分は孔明、ハンニバル、ナポレオンだ。
余談
知人たちの会話が
「『テラフォーミングマーズ』『テラミスティカ』をひたすら回す「テラ会」なんて開催したいですね~」「なら『テラ~私たちの地球』も」「『テラフォーマー』も」
と盛り上がっているところに 「『テラノバ』も!」と入っていったらものすごく神妙な顔をされた経験が筆者にはある。そんな知名度。
【3次元アブストラクト】サントリーニ【写真映え】
箱絵がかわいい!ゲーム内容物も造形が凝っていて見た目華やかなアブストラクトゲームだ。
1手番ごとに移動→建設を繰り返し、先に3階に到達した人の勝ち。プレイヤーごとに特殊能力が付与されるルールもあるが、筆者のプレイ環境では能力抜きでプレイすることが多い。
『立体パズルになることで三次元的な思考が要求される…』とは言わない。そもそも三次元的な思考ってなんだ。
このゲームの
- 自駒が2つ。多すぎず少なすぎず
- 慣れてきたら詰みまでの道筋が見えやすいこと
に魅力を感じている。駒が一つだと少し窮屈だし、どうしようもなくなることがある(コリドール)。一方で、あまりに多いとおざなりに動かしても何となくうまくいくことがあるし手なり感も生まれる(テラノバ)『駒2つ』、地味にプレイ感向上に寄与していると思っている。
気づき
3ゲームとも「誰のものでもない駒」が登場することにここまで書いてから気づいた。これについては今後整理してまとめる。
多人数アブストラクトの抱える利点と欠点
紹介したゲームがすべて多人数対応のアブストラクトゲーム。ゲーム説明で述べた特徴の他に、これらには共通の魅力そして共通の欠点がある。順に挙げていく。
A 魅力
1 思考量の割にルールが簡単
『ルールはシンプル、ただ対戦相手の《思考》という最強レベルの複雑さを攻略せねばならない』というのがアブストラクトゲーム全般に共通する姿勢だと感じている。純粋な思考戦の要素を強調・抽出するためにルールを簡単にしているのではないかとも思う。紹介したゲームも含め、多くのアブストラクトはルール自体は1~5分程度で説明できる。しかし、勝つのがとても難しい。多人数なら読み解く必要のある相手が多くなるのだからなおさらだ。存分に考えることを楽しめる。
2 見通しが程よく悪い=経験による差がつきにくい
上で述べた利点を別角度から言っただけでは?
下で述べてる欠点を別角度から言っただけでもある。ボードゲームの中でも特に2人用アブストラクトに顕著な特徴が『経験者有利』だ。運要素無いのだからそりゃそうだ。
ところが多人数アブストラクトではもう完璧な先読みなんて無理だ。読みの深さと広さは個人個人で全然違うし、初心者の何気ない一手が絶妙な布石に化けることもままある。運要素0ゲームを紹介する記事でこれを利点に含めていいが少し悩んだが、劇的な展開を演出できる点を僕は評価したい。
スマブラで終点アイテム無し1vs1を好む人もいれば(≒2人用アブストラクト)、アイテム有り大乱闘を好む人もいる(多人数アブストラクト)そんな感じで認識している。スマブラでいえば当然自分は後者。
B 欠点
1 お仕事感=キングメーカー問題
コリドールとサントリーニで特に顕著なのがこれだ。アブストラクト系のゲームは、誰かの勝利=ゲーム終了なことが多い。上記2つのゲームも例に漏れず、勝利条件を達成すれば問答無用で勝利なため、将棋でいう『王手』の状況がよく発生する。 他プレイヤーは 王手のプレイヤーを全力で止めなければならない。 しかし、 王手をわざわざつぶしに行くのは貴重な自分の手番を1つ無駄にすることを意味する。大抵の場合、王手プレイヤーの直前手番の人が損を被ることになる。このプレイ感は、まぁ、あまり愉快なものではない。
しかもこの欠点は多人数アブストラクトという構造上おそらく避けられない。この類のゲームにおいては、読みよりもむしろヘイト管理の方が大切なのかもしれない。
この不満を解消するためにコリドールで1度、『手番順をランダムにする』というハウスルールを試したことがある。
- 適当な布袋とプレイヤーカラーに合わせたダイス(おはじきでも何でもいい)を用意する。
- 袋にダイスを4つ入れて1つずつ引き、出たダイスカラーの者が手番を行う。
- 全部引ききったら袋にダイスを戻す。
結論から言うとそこそこ盛り上がりはした。個人的には楽しめたが、『アブストラクトゲームを楽しんだ』とは決して言えない楽しみ方だった。これはむしろ「テストプレイなんてしてないよ」をプレイした時の体験に近い。
思うこと
純粋な思考戦が好きと言ったくせに多人数アブストラクトの見通しの悪さを評価したりと、1記事内で矛盾が生じていることに気づいた方もいるかもしれない。自分もこの感覚には驚いた。自身の感覚の整理のために改めて好みを確認する。
考えることが好き⇔運要素、手なり感、右脳系ゲームが不得手、苦手。
思索の結果、上記のような気付きを得た。これだけだと何言ってるんだお前状態なのでもう少し説明する。
僕は運要素があまりに強くて自分の意志が介在しないゲームが苦手だ(極端な例:ババ抜き、人生ゲーム)。色や図形の処理スピードを競うタイプのものもあまり得意ではない。自分の思惑が他プレイヤーに少なからず影響を与えるタイプのゲームの方が好ましい。何度も述べているように運要素0のゲームでは『考える』という行為を存分に楽しむことができる。相手の手をどこまで読むか・読んだうえで最も有効な手は何か。思考は限りなく広がる。
僕はこの『考える』行為そのものが好きでアブストラクトを楽しんでいるのだと思う。(めっちゃ考えてるな俺..!みたいな感じで自分に酔ってる部分も少なからずある)。そのため、実際の展開が予想と大きく異なっていたりしても特に気にはならない。ヘイト管理が下手で一時的に1vs3になったりしてもまぁ仕方ない。そこも含めてゲームだ。
考え抜いて狙い通りの展開になることに楽しみを見出したり、逆にそれを上回る相手の手に感心したり、所謂ガチ勢的な楽しみ方がアブストラクトゲームの本流だと思われがちだ。ここで敢えて違う楽しみ方を提唱したい。
『筋道立てて考えて、論理的に考えて、相手の認知限界を探ったりして、時に頭脳バトル漫画のようなロールプレイングを楽しみながらプレイするボードゲームって最高ですよ!』
アブストラクトゲームやりましょう。少しでも興味を持ってもらえたら幸い。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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